緑内障/視神経乳頭陥凹拡大

緑内障は、眼圧などの影響で視神経が少しずつ傷み、見える範囲(視野)が狭くなっていく病気です。かなり進行するまで自覚症状がなく、早期に発見できれば点眼やレーザー治療(SLT)で進行を抑えることが期待できます。近視の方・40歳以上の方は、症状がなくても眼科での検診が大切です。

目次:定義・検査・治療・生活

治療の比較:点眼とレーザー(SLT)

治療対象目的承認状況効果指標期間主なリスク通院・管理費用・保険情報確認日
点眼治療開放隅角緑内障・高眼圧症など(薬剤ごとに適応・禁忌あり)眼圧下降(緑内障治療で唯一エビデンスのある治療対象)各薬剤とも国内承認プロスタグランジン関連薬で眼圧25〜33%低下 など薬剤により異なる継続点眼(配合剤で回数軽減も可能)薬剤ごとの副作用(充血・まつ毛変化・全身への影響など)定期的な眼圧・視野・OCT検査保険診療2026年8月19日
SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)開放隅角緑内障・高眼圧症。点眼が困難/不十分な方。第一選択とする研究報告も増加房水流出路の改善による眼圧下降国内で実施される確立したレーザー治療眼圧下降(効果・持続には個人差があり、下がらない場合もあります)外来で実施。効果の持続には個人差一時的な眼圧上昇、虹彩の腫れ、まぶしさ、眼痛など治療後も定期検査を継続保険診療(詳細は診察時にご説明します)2026年8月19日

分かっていること・分かっていないこと

  • 分かっていること:眼圧を下げることが、エビデンスのある唯一の治療対象であること。早期発見・治療により、視覚障害に至ることは少なくなっていること。点眼前のSLT(第一選択)の有効性を示す研究が増えていること。
  • 分かっていないこと:進行速度の個人差(血流・体質など眼圧以外の因子の関与)を正確に予測すること。SLTの効果がどのくらい持続するかの個人差。
  • 当院で説明できること:「緑内障」ということばのグラデーション(疑い〜重症)に応じた病状説明、点眼とSLTの使い分け、妊娠・授乳中の管理、視野検査・OCTによる進行のモニタリング。

一次資料:日本緑内障学会(緑内障診療ガイドライン)(情報確認日:2026年8月19日)

【緑内障の早期発見〜手術を避ける緑内障診療】

◯ かなり進行するまで、自覚症状がありません。
 
◯ 治療方法が発展した現代では、効率的に眼圧を下げることができるようになりました。
 
○ 「予防医学」リスクファクターを知って早期発見できれば、失明に至ることは非常に少ない疾患となっています。
 
✔ “目が悪い”(近視)/40歳以上の方:眼科検診が重要
 
✔ 幅広い意味をもつ「緑内障」の病名(疑い~軽症~重症まで)に対して、説明・理解を大事にした診療
 
✔ 点眼、またはレーザー(SLT)により眼圧下降をはかります。

目をカメラにたとえた説明画像:眼球断面図(角膜・網膜・視神経の位置)とフィルムカメラの写真を並べ、網膜がカメラのフィルムにあたる部分であることを示す
カメラのフィルムにあたる部分「網膜・視神経」に異常が出ていないか

中心視野と周辺視野の違いも記載しています。

視神経乳頭陥凹拡大に対して、網膜の神経線維層の厚みを計測:詳細を書いた文章です。

緑内障の早期発見と診療についてのイラスト:かなり進行するまで自覚症状がないこと、画像診断と眼圧下降治療が発展したこと、リスクを知って早期発見できれば失明に至ることは非常に少ないこと、点眼またはレーザー(SLT)で眼圧下降をはかることを紹介

なぜ緑内障の進行に個人差が大きく出るか?ひとつの考え方を記載しています。

○ 目の中の水の循環の変動は「眼圧」としてあらわれます。
水晶体の周りの「毛様体」から産生された水(房水)がくろめの裏(前房)を満たしメッシュ構造をもつ「線維柱帯」を通って、目の外の血管へ流れて行きます。

眼圧
眼圧の測り方3種類の比較写真:ノンコンタクトトノメーター(空気圧で非接触測定・麻酔不要)、iCare(プローブが瞬間接触・携帯性に優れる)、Goldmann圧平式眼圧計(角膜に直接接触・最も精度が高い・局所麻酔が必要)


 
○ この間のバランスが悪くなると眼圧が上がり、長い時間をかけて目の奥の神経を傷めていきます。=「緑内障」
 進行すると、見える範囲(視野)に影響を及ぼします。

正常な眼と緑内障の眼を比較した断面イラスト(英語表記):正常では房水の排出路(drainage channel)が通っているのに対し、緑内障では排出路がふさがれて眼圧が上昇(pressure buildup)し、視神経に変化が生じることを示す

○ 心配な緑内障か、そうでないか:
「緑内障」のことばには、グラデーションがあります。

Glaucoma continuum(緑内障の連続的経過)の図(Weinreb 2004):網膜神経細胞の変化が検査に現れない段階から、OCTで網膜の形態変化を検出できる無症状の段階、視野検査で機能変化が現れ視覚障害の自覚症状が生じる段階までの流れを示す
https://doi.org/10.1016/j.ajo.2004.04.054
Glaucoma continuumの簡略図:網膜神経細胞の変化は長期間かけて進行し、自覚症状のない期間が続く。OCTは「形」の変化が検出され始める段階を、視野検査は「機能」の変化が検出され始める段階をそれぞれ矢印で示す

○ 眼圧以外に緑内障の進行に関わる因子には、
・視神経の周りの血流
・酸化ストレス
・全身疾患(睡眠時無呼吸症候群、高血圧、低血圧、糖尿病 等)
・喫煙
などもあります。

○ 緑内障治療の対象でエビデンスがあるとされているのは、唯一「眼圧」を下げることです。
 
 点眼で眼圧下降をはかることが、緑内障診療の基本です。
 
 現在では、レーザーによる房水排出路改善を考慮されることもあります。
 (SLT, selective laser trabeculoplasty: 選択的レーザー線維柱帯形成術)
 
 ✔ 抗緑内障薬を点眼する前のSLT(第一選択としてのSLT治療)が有効であるという研究結果も、増加しています。

緑内障とは
図解でわかりやすく説明します:

眼圧のしくみの図解:房水が毛様体(上皮)で産生され線維柱帯から排出されるバランスで眼圧が決まることを示す眼球前部の断面図(参天製薬提供)

✔ 開放隅角緑内障
房水排出路に抵抗があり、眼圧が上がる。
* 多くの緑内障は、この状態です。
 
「正常眼圧緑内障」も重要です。
・循環障害
フラマー症候群
         等

緑内障の薬物治療(眼圧を下げる仕組み)の図解:眼球前部の断面図で、房水が毛様体(上皮)で産生され線維柱帯から排出される流れと、薬が作用する3つの部位を番号で示す(参天製薬提供)

(1) ぶどう膜強膜流出路(副経路)に作用し房水を流す
 :プロスタグランジン関連薬
 キサラタン、ラタノプロスト、タプロス、トラバタンズ、ルミガン
 ・眼圧を25-33%も低下させる効果的な薬剤

(2) 房水の出方を緩くする(房水産生抑制)
 :(2a) β神経遮断薬
 ミケランLA、チモプトール、チモプトールXE
 :(2b) 炭酸脱水素酵素阻害薬
 エイゾプト、トルソプト
 :(2c) α作動薬
 ブリモニジン(アイファガン)
 房水産生抑制と排出促進の二重効果を持つ
 
(3) 線維柱帯・シュレム管(主経路)に作用し房水を流す
 :ROCK阻害薬
 グラナテック

 :コリン作動薬/縮瞳薬
 ピロカルピン(サンピロ)
→ かつては主流だったが、現在は副作用と頻回点眼の必要性から使用頻度が減少

 
それぞれを組み合わせた、合剤(配合剤)も使用します。
点眼回数を減らせることが主な利点です。

緑内障のレーザー治療(選択的レーザー線維柱帯形成術・SLT)の図解:線維柱帯にYAGレーザーを照射して詰まった色素を少なくし、房水の排出を促して眼圧を下降させる治療であることを示す眼球前部の断面図

✔ 開放隅角緑内障・高眼圧症
房水排出路(線維柱帯)に、低エネルギーのYAGレーザーを照射:SLT
→色素を選択的に減少させ、眼圧下降をはかる。
* 線維柱帯 その他の組織にダメージを与えません。
 
・点眼が困難なかた(副作用/仕事が不規則/妊娠・授乳中/点眼を忘れやすい等)
・点眼で十分な眼圧下降が得られないかた 等

狭隅角の分類

緑内障の分類:開放隅角と閉塞隅角

狭隅角眼・急性緑内障発作後 白内障手術

緑内障の目に、白内障手術をする理由:
隅角(水の通り道)を広くして、眼圧を下げる。


Optic Nerve Fibers(視神経線維)[34秒の動画]
 
・正常の視神経は、100万本の神経線維からできています。
 
・緑内障が進んでくると、視神経がダメージを受けて、視神経乳頭陥凹(へこみ)が大きくなってきます。
 
・そして、見えていない部分(暗点)が広がってきます。
 
・眼科で視野検査をすることで、自覚症状のない暗点を検出することができます。


緑内障について[56秒の動画]
 
・光は角膜、瞳孔、水晶体、硝子体を通って網膜に到達します。
 
・網膜の中心部「黄斑部」とその周辺の網膜から光はシグナルに変換され、視神経を通って脳に情報が伝達されます。
 
・健康な眼では房水と呼ばれる透明な液体が眼球の前半分を循環して、一定の圧を保っています。
 
・房水は線維柱帯と呼ばれる網状の組織から流れていきます。
 
・線維柱帯から適切に房水が流れて行かないことがあります。眼圧が上がり、時間をかけて眼球の後方の視神経が傷めていきます。

開放隅角緑内障[38秒の動画]
 
・健康な眼では房水と呼ばれる透明な液体が眼球の前半分を循環して、一定の圧を保っています。
 
・房水は線維柱帯と呼ばれる網状の組織から流れていきます。
 
・線維柱帯から適切に房水が流れて行かないことがあります。眼圧が上がり、時間をかけて眼球の後方の視神経を傷めていきます。

閉塞隅角緑内障[44秒の動画]
 
・健康な眼では房水と呼ばれる透明な液体が眼球の前半分を循環して、一定の圧を保っています。
 
・房水は線維柱帯と呼ばれる網状の組織から流れていきます。房水が流れていく部位を「隅角」と呼びます。
 
・隅角が狭く、房水が流れて行きづらいことがあります。
これを「閉塞隅角緑内障」と呼びますが、頻度は多くありません。
 
・アジア人、遠視(若いころから”目がいい”)のかたはリスクが高いです。

緑内障について[2分20秒の動画]
 
・緑内障は脳の奥に情報を伝達する「視神経」を傷めていく病気です。
 
・幸いなことに、早期発見できればたくさんの治療の選択肢があって、視力を守っていくこともできます。
 
・健康な眼では房水と呼ばれる透明な液体が眼球の前半分を循環して、一定の圧を保っています。
 
・房水は線維柱帯と呼ばれる網状の組織から流れていきます。
 
・線維柱帯から適切に房水が流れて行かないことがあります。眼圧が上がり、時間をかけて眼球の後方の視神経を傷めていきます。
 
・緑内障は初期には自覚症状がありません。適切な治療で進行を止めたり遅らせて、視覚障害の進行を防ぐことができます。
 
・60歳以上、アフリカ系アメリカ人、眼圧が高いかたは特に眼科受診で緑内障評価が重要です。
 
・緑内障が進行して視神経障害が進んでしまうと、戻すことができません。
 
・緑内障と診断されて、適切な点眼治療をすることができれば視覚障害に至ることは少なくなってきました。
 
・高眼圧の方も眼圧下降治療効果があるようです。
 
・リスクファクターのあるかたは、必ず定期的に眼科受診をすることが重要です。

緑内障に対するレーザー手術[3分12秒の動画]
 
・緑内障の治療のため、選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)が推奨されることがあります。
 
・眼圧が上昇することによって、緑内障の病態は悪化します。
 
・SLTにより目の中の水の流れを改善させ、眼圧を下げます。
 
・前眼部で「房水」が産生され、正常では線維柱帯と呼ばれるメッシュ構造の組織より適切に排出されます。
 
・緑内障では、メッシュ状の「線維柱帯」からうまく房水が排出されず眼圧が上昇し、目の奥の視神経の障害につながります。
 
・SLTでは特殊なレーザーを用いて、流出路を改善します。
 
・外来でおこなうことができます、終了後落ち着いたら帰宅できます。
 
・麻酔により、目を少し押された感覚がある程度の痛みです。
 
・特殊なコンタクトレンズを眼球に接触させ、レーザーを正確な位置に照射します。
 レーザー治療をおこなったあと、正常に房水が排出されることが期待されます。
 その結果、眼圧が下降します。
 
・合併症として、
 一時的・恒久的な眼圧上昇/虹彩の腫れ/まぶしさ/角膜混濁/虹彩癒着による眼圧上昇/瘢痕化組織/眼痛/視力低下/追加の処置、手術の必要性 等
 一般的な手術に伴うものも多く挙げられます。
 
・代替の治療手段としては、
 点眼治療/緑内障手術
 
・眼科医はレーザー治療の必要性について、十分な説明をおこないます。
 
・レーザー治療を行っても、思うように眼圧が下がらないこともあります。
 治療がされないまま、また治療が不十分であると、
 緑内障は失明につながる疾患です。
 
・不明なことがあれば、遠慮なく眼科医にお尋ねください。
 リスク・効果について詳しく説明をおこないます。
 
・その他一般的な目に関する質問も、なんでも聴いてください。
 眼科医はすべてのひとの視力を守る使命があります。