緑内障のレーザー治療(SLT)【動画でご紹介】

2024追記

緑内障に対して、レーザー治療が有効なこともあります。
眼底のレーザーと異なり、組織破壊を伴わないことが特徴です。

○目の中の”水の通り道”「隅角/線維柱帯(ぐうかく/せんいちゅうたい)」の通りを良くすることで、眼圧下降をはかります。

音声の解説(当ホームページよりGoogle NotebookLMで生成)
Table of Contents

緑内障のレーザー治療(SLT)【動画でご紹介】

  • 点眼麻酔の後に、特殊なレンズ(隅角鏡)を付けます。
  • 線維柱帯へ、低エネルギーのYAGレーザーを照射します。
  • 半周あたり50発程度、全周の隅角へレーザー照射をおこないます。
  • レーザー照射サイズは400μmです。パワーは0.8mJ程度。
  • 隅角に詰まった色素細胞が、眼圧上昇に関わっています。
  • [照射後の線維柱帯の内部]炎症細胞・サイトカイン(蛋白)が集まってきます。
  • 炎症細胞(マクロファージ)が、色素細胞をたべます。
  • 組織のダメージなく、線維柱帯の通りを改善します。
  • 毛様体上皮→線維柱帯に向かって、房水は流れます。
    線維柱帯の通りが改善し、眼圧が下降します。
  • 色素の少なくなった線維柱帯(拡大図)
    房水の通りが良くなっています。

(Ellex社 動画より)

「選択的レーザー線維柱帯形成術」Selective Laser Trabeculoplasty, SLT

 通常の外来でおこないます。(保険適用:隅角光凝固術)

○対象:開放隅角緑内障・高眼圧症と診断されたかたのうち、

・点眼が困難なかた(副作用/仕事が不規則/妊娠・授乳中/点眼を忘れやすい等)
・点眼で十分な眼圧下降が得られないかた、

 などへ、適応が考慮されます。

✔ SLTは1995年にはじめて行われて、2001年にFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を得られて普及してきた治療です1
✔ 最近の臨床研究にて、高い治療効果が相次いで確認されています。
✔ 失われた視野を回復させるものではありません。
✔ レーザー後当日より、通常通りの生活を続けて問題ありません。
(生活上の注意点、気をつけることなどはありません)

2001年FDAの承認後、SLTの実施件数は大幅に増加し、
米国では2001年の75,647件から2012年には142,682件まで増加しました1

SLT:実際の治療の流れ

治療前後の1時間で眼圧測定を行う必要があるため、
平日の9時または14時の来院、
長めに時間を取れる日をご予約いただいています。
(待ち時間を含めて、およそ3時間以内の時間を要します)

治療当日

本日の眼圧測定・前眼部診察・角膜内皮細胞測定後、
一過性眼圧上昇を抑える「アイオピジン」を点眼します。

1時間の待ち時間

商店街をお散歩、向かいにカフェも
院内の紅茶を飲んでお待ちいただくのも良いです。

治療

5-10分程度で終了します。

痛みはほとんどありません。

眼圧測定

前眼部の状態を診察、眼圧測定後
「アイオピジン」を点眼します。

1時間の待ち時間
治療1時間経過後の眼圧測定、診察終了

「アイオピジン」を点眼します。
3日間は少しぼやけて見えることは、予定通りです。
弱い前房内炎症が起こることにより、隅角色素が減っていく過程と考えられます。

1週間後再来

治療1週間経過後の眼圧測定。
必要に応じて、未治療片眼の治療を行います。

緑内障のレーザー治療:第一選択としてのSLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)を評価した、重要な2編の論文

○イギリスのThe Lancet誌の臨床研究2
LiGHT(Laser in Glaucoma and ocular HyperTension:緑内障・高眼圧症に対するレーザー手術)研究
718人の開放隅角緑内障・高眼圧症の患者さんを、
緑内障点眼群362人(622眼)・SLT群356人(613眼)の2グループにわけて3年間検討。

✔SLT群74%は、3年間点眼せずに眼圧コントロールができるようになった。
✔医療コストの面でも、費用対効果が改善した。

Infographic: Laser in Glaucoma and Ocular Hypertension Trial (LiGHT)

○日本眼科学会雑誌の臨床研究3
42例40眼の開放隅角・正常眼圧緑内障(Normal Tention Glaucoma, NTG)に対して、SLT第一選択の治療を3年間おこなった。

✔SLT後3年間は、眼圧が有意に下降した。
 (15.8±1.8mmHg→13.5±1.9mmHg; p<0.001, paired t-test)
✔視野障害の進行速度を表す指標(MD slope/VFI slope):3年間の進行速度は緩徐であった。
 (ハンフリー視野計を使用)

* いずれの研究結果も、重篤な合併症がなかったことが記載されています。

2025年追記

緑内障レーザー治療SLT|2024年 30論文の検証では、2024年までのエビデンスをまとめています。 ここでは、その後に発表された重要な研究結果を追記します。

LiGHT研究:6年間の追跡結果(2023年)

LiGHT研究は3年の追跡後も継続され、2023年に6年間の追跡結果が報告されました⁵。

✔ SLT群の約70%が、6年間にわたって点眼薬や手術を使わずに目標眼圧を維持できた。
(3年時点の約75%から大きく変わらず、長期にわたる効果の持続が確認されました)

✔ 緑内障の進行が確認された割合:点眼群 26.8% に対し、SLT群は 19.6% と有意に少なかった。

✔ 緑内障手術(線維柱帯切除術)の件数:点眼群 32眼 に対し、SLT群は 13眼 と有意に少なかった。

✔ 白内障手術の件数:点眼群 95眼 に対し、SLT群は 57眼 と有意に少なかった。

重篤なレーザー関連の合併症は報告されていません。

SLTの効果持続期間:「6年以上」

以前は「SLTの効果は平均2〜3年程度」と説明されることが多くありました。 LiGHT研究の6年間のデータから、SLTの効果が持続する期間の中央値は6年以上であることが示されています。

再施術が必要になった場合も、SLTは繰り返し行える治療です。

SLTは視野の悪化を遅らせる可能性がある(2025年)

LiGHT研究のデータを、改良された統計手法で再解析した研究が2025年に報告されました⁶。

✔ SLT群は点眼群に比べて、視野の悪化速度が29%遅かった (−0.26 dB/年 vs −0.37 dB/年、P=0.006)

眼圧を下げる効果だけでなく、視野(見える範囲)の維持においても、SLTに優位性がある可能性が示されています。

すでに点眼薬を使っている方へ(2025年)

2025年、LiGHT研究の拡張データをもとにした解析が JAMA Ophthalmology 誌に発表されました⁷。

点眼薬で3年以上治療を続けた後にSLTを行った場合でも、点眼薬の本数を減らしたり、眼圧コントロールを安定させる効果が得られたことが報告されています。

「すでに点眼薬を使用しているためSLTは関係ない」とは限りません。 点眼薬の負担を軽減する目的でも、SLTを検討できる場合があります。

SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)は、なぜ効果があるのか

隅角へのレーザー照射によって集まってきた炎症細胞(マクロファージ)が、線維柱帯に詰まった色素を食べてしまう(貪食)
以上が、主要なメカニズムと考えられています4

昔に行われていたアルゴンレーザーによる治療(ALT)と違い、組織破壊を起こしません。
目の中の水の通り道「隅角・線維柱帯」を損傷することがありません

参考文献

1. Garg, A., Gazzard, G., 2018. Selective laser trabeculoplasty: past, present, and future. Eye (Lond) 32, 863–876. https://doi.org/10.1038/eye.2017.273
2. Gazzard, G., Konstantakopoulou, E., Garway-Heath, D., Garg, A., Vickerstaff, V., Hunter, R., Ambler, G., Bunce, C., Wormald, R., Nathwani, N., Barton, K., Rubin, G., Buszewicz, M., Ambler, G., Barton, K., Bourne, R., Broadway, D., Bunce, C., Buszewicz, M., Davis, A., Garg, A., Garway-Heath, D., Gazzard, G., Hunter, R., Jayaram, H., Jiang, Y., Konstantakopoulou, E., Lim, S., Liput, J., Manners, T., Morris, S., Nathwani, N., Rubin, G., Strouthidis, N., Vickerstaff, V., Wilson, S., Wormald, R., Zhu, H., 2019. Selective laser trabeculoplasty versus eye drops for first-line treatment of ocular hypertension and glaucoma (LiGHT): a multicentre randomised controlled trial. The Lancet 393, 1505–1516. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(18)32213-X
3. 正常眼圧緑内障に対する第一選択治療としての選択的レーザー線維柱帯形成術の有用性. 新田 耕治, 杉山 和久, 馬渡 嘉郎, 棚橋 俊郎. 日本眼科學会雜誌 2013年117号4巻, p.335-343
4. Alvarado, J.A., Katz, L.J., Trivedi, S., Shifera, A.S., 2010. Monocyte modulation of aqueous outflow and recruitment to the trabecular meshwork following selective laser trabeculoplasty. Arch. Ophthalmol. 128, 731–737. https://doi.org/10.1001/archophthalmol.2010.85
5. Gazzard G, Konstantakopoulou E, Garway-Heath D, et al; LiGHT Trial Study Group. Laser in Glaucoma and Ocular Hypertension (LiGHT) Trial: six-year results of primary selective laser trabeculoplasty versus eye drops for the treatment of glaucoma and ocular hypertension. Ophthalmology. 2023;130(2):139-151. doi:10.1016/j.ophtha.2022.09.009 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36122660/
6. Montesano G, Crabb DP, Garway-Heath DF, et al. Six-year rate of visual field progression in the Laser in Glaucoma and Ocular Hypertension Trial. Ophthalmology. 2026;133(2):169-177. doi:10.1016/j.ophtha.2025.09.023 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41043781/
7. Konstantakopoulou E, Gazzard G, Garway-Heath D, et al. Selective laser trabeculoplasty after medical treatment for glaucoma or ocular hypertension. JAMA Ophthalmol. 2025;143(4):295-302. doi:10.1001/jamaophthalmol.2024.6492 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11843460/

* ランセット(The Lancet):国際的に最も信頼される、世界五大医学雑誌のうちのひとつとして知られています。

Takeru Yoshimura, M.D., Ph.D.

たける眼科
takeru-eye.com
福岡市早良区「高取商店街」
西新駅/藤崎駅(福岡市地下鉄)

日本眼科学会 眼科専門医
医学博士(九州大学)

当ウェブサイトに掲載されている情報は、一般的な情報提供のみを目的としており、個別の医療アドバイスに代わるものではありません。ご自身の健康状態や治療に関するご質問は、必ず眼科専門医・医療専門家にご相談ください。

「症状」を“Googleする”:医療情報を正しくつかうために
https://takeru-eye.com/blog/04102021-never-google-your-symptoms/

目の炎症とは? https://takeru-eye.com/ocularinflammation/

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