サイトへ戻る

メディカルレチナ(手術をしない網膜疾患の診療)

大学院では免疫学を専攻しました。

網膜の病気を、免疫学の知識から考えるきっかけになっています。

網膜疾患に対する古くからの治療:ステロイド・網膜光凝固

○ 糖尿病の合併症

糖尿病黄斑浮腫(Diabetic macular edema, DME)

増殖糖尿病網膜症(Proliferative diabetic retinopathy, PDR)

* 糖尿病で細い血管が障害される期間が長く続き、網膜の血の巡り(血流)が悪くなります。

重症度は、DME<PDR。

○ 網膜の血管が詰まる病気

網膜静脈分枝閉塞症(Branch retinal vein occlusion, BRVO)

網膜中心静脈閉塞症(Central retinal vein occlusion, CRVO)

* 網膜の血管が急に詰まることによって、網膜の血の巡り(血流)が極端に悪くなります。

重症度は、BRVO<CRVO。

高血圧・動脈硬化や糖尿病などが、リスクファクターです。

✔︎ 血の巡りの悪くなった(虚血)網膜:「諸悪の根源」

→ 炎症を起こし、産生されたたんぱく質(サイトカイン)が目の中にたまります。

以上の網膜疾患の治療の際には、ステロイド後部テノン嚢下注射(Sub-tenon triamcinolone acetonide injection, STTA)をおこなうことがあります。

眼球の後ろにステロイド懸濁液を貯留させる治療です。

2-3か月は効果が続き、主に炎症による網膜浮腫(水がたまること)を改善します。

「炎症を抑えるためにステロイドを用いる」

古くから行われていますが、現在でも大事な治療法です。

虚血におちいっていると判断された網膜には、網膜光凝固(網膜レーザー)を十分におこないます。

それにより、炎症を引き起こす場所=虚血網膜のエリア を相対的に減らします。

目の中で悪さをするたんぱく質(サイトカイン)の種類・量には、規則性があった

当時もたくさんの硝子体手術がおこなわれていた九大病院眼科で、硝子体液を解析することになりました。

上記に挙げた網膜疾患の他に、

○ 網膜に穴が開いて、剥がれてしまう病気

裂孔原性網膜剥離(Rhegmatogenous retinal detachment, RRD)

* 黄斑部(ものをみる大事な部分)まで剥がれてしまうことで、失明につながります。

* 「飛蚊症の増加(ゴミが飛んでみえるなどの症状)」が自覚症状となることが多いです。

* 速やかな手術治療が必要になります。

硝子体手術とは、

目の中のゼリーである硝子体を切除し取り去り、水に置き換える手術です。

硝子体が網膜を引っ張る悪影響を取る(硝子体牽引の解除)と同時に、

目の中にたまったたんぱく質(炎症性サイトカイン)を大幅に減らす効果もあります。

倫理委員会の承認を得たのち

-80℃に冷凍保存されたたくさんの硝子体液を解析したところ、

共通して上がってくる炎症性サイトカイン(蛋白)があることがわかりました。

・インターロイキン6(Interleukin-6, IL-6)

・インターロイキン8(Interleukin-8, IL-8)

・単球走化性促進因子(Monocyte chemoattractant protein-1, MCP-1)

・血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor, VEGF)

炎症性サイトカインの濃度が高くなることで、網膜硝子体疾患の病勢が強くなる:

血流が悪くなった(虚血)網膜の範囲が広くなるにつれて炎症も強くなる、ことも示唆する結果でした。

網膜がはがれること(網膜剥離をおこした目の内部)で強い炎症が起こっている事実にも、当時驚いたことを覚えています。

428個のサンプルから得られた結果を、統計学的に解析し発表しています。

ご協力してくださった先生方ありがとうございます。

ステロイドによる炎症抑制が、網膜疾患に効果があったことを裏付ける結果となりました。

血管内皮増殖因子(VEGF)を抑える治療

ステロイドは全体の炎症を抑えるが、副作用がある。

(白内障・眼圧上昇・ステロイド緑内障・感染症 等)

他の因子で効くものはないかと世界中で検証されてきました。

1994年に米国ハーバード大学のAiello先生により、

「VEGFの濃度が糖尿病網膜症その他の網膜疾患で高くなっている」ことが発表されています。

Aiello, L., et al. (1994). Vascular Endothelial Growth Factor in Ocular Fluid of Patients with Diabetic Retinopathy and Other Retinal Disorders The New England Journal of Medicine 331(22), 1480-1487. https://dx.doi.org/10.1056/nejm199412013312203

その後世界中で研究が進み、VEGFに関しては星の数ほどの論文が発表されています。

目の中のVEGFを薬で減らす治療:

2008年に抗VEGF抗体が使われるようになり、劇的な効果に驚いたことは記憶に新しいです。

現在では、

・ルセンティス®(ノバルティスファーマ)

・アイリーア®(参天製薬)

・ベオビュ®(ノバルティスファーマ)

を、直接眼内(硝子体内)に注射する方法が用いられています。

画像診断の発展:

造影剤を使わない網膜血管の描出/網膜より深い層「脈絡膜」の状態把握

網膜疾患・ぶどう膜炎の診療では、フルオレセイン血管造影(Fluorescein angiography, FAG)をおこなってきました。

造影剤アレルギーによるショックを起こす危険があり、個人のクリニックではおこなうところが少なくなっているようです。

OCTアンギオグラフィー(OCT angiography, OCTA; OCT血管撮影)

を用いた診療をおこなっています。

造影剤のリスクがありません。

上記網膜疾患の他に、

○ 加齢による網膜中心部(黄斑)の障害

加齢黄斑変性(Age-related macular degeneration, AMD)

○ 強度近視にともなう網膜中心部(黄斑)の障害

近視性黄斑変性・近視性黄斑症(Myopic macular degeneration; Myopic maculopathy)

○ 網膜中心部(黄斑)に水がたまる

中心性漿液性脈絡網膜症(Central serous chorioretinopathy, CSC)

○ 脈絡膜が厚くなり脈絡膜新生血管を発症する

Pachychoroid neovasculopathy, PNV:* 各疾患と概念がオーバーラップします。

以上の網膜疾患に対して、

OCT血管撮影で描出する:

・虚血網膜の状態

・脈絡膜新生血管の状態

・網膜新生血管の状態 

・黄斑部無血管野の状態

また、

網膜より深い層「脈絡膜」の状態把握には

高深達OCT(Enhanced depth imaging OCT, EDI-OCT)

のモードも用いています。

・脈絡膜の厚み

・脈絡膜血管の状態

等を把握することができます。

OCTA/EDI-OCTは、ぶどう膜炎の診療にも役立っています。

開院後約2年間使ってきて、

個人のクリニックでも血管の状態・脈絡膜の状態がきれいに描出できることに、時代の流れを実感します。

* 造影剤を用いた精密検査が必要になる場合もあります。

メディカルレチナ(手術をしない網膜疾患の診療):役割

薬物治療・画像診断の飛躍的な発展に伴い、

手術を必要とせず治療できる網膜疾患が、以前と比べてとても増えました。

メディカルレチナとは、サージカルレチナ(網膜の手術治療)に相対する言葉です。

この10年くらいで耳にするようになった気がします。

高取でわたしたちが行うことは、

○ 画像診断を用いた、網膜疾患の早期発見・経過観察

○ 手術を行わない治療

○ 「いつでも受診しやすい」「わかるまで質問しやすい」環境を整えて、患者さんの不安に応えること

です。

範疇を超える疾患については、適応に応じて手術治療を得意とする医師をご紹介します。

「併診」をおこなうことも多くあります。

時期を逸することがないようにすることが、最重要です。

九州大学眼科医局繋がり、その他多くの先生の助けを得て診療をおこなっています。

いつもありがとうございます。

たける眼科

www.takeru-eye.com

「高取商店街」

福岡市地下鉄 西新駅/藤崎駅

すべての投稿
×

もう少しで完了します。

あなたのメールアドレスにメールを送信しました。 読者登録の承認のため、届いたメールのリンクをクリックください。

OK