眼科の「予防医学」:地域にあわせた診療(アップデート)

眼科の「予防医学」が、いまの高取での診療の中心になってきています。
目の病気は、自覚症状がないことが多いです。

重症化した眼疾患に向き合いながらも、予防医学の重要性を思います。
「眼科ドック」について:自覚症状のない眼疾患の早期発見

年間を通じて、多岐に渡る論文を参照しました(「最新記事」に、随時ご紹介しています)。
免疫学の考え方を軸として、地域にあわせた診療方針を構築します。

目次

眼科の「予防医学」:地域にあわせた診療(アップデート)

年内の診療を終えて、大晦日になりました。
今年も多くの方にお世話になりました、本当にありがとうございます。

お話を聞いて、時間をかけた診療をおこなっています。

○ 緑内障の早期発見(とくに40歳以降)
 → 生涯にわたり、視野異常の自覚症状が出ないようにする
目の中の「視神経」のお話(スクリーニング)
緑内障の早期発見:セルフチェックの方法(3つご紹介)

○ こどもの近視進行抑制(小学生~中学生)
 → 数十年後の、網膜疾患・緑内障発症予防
近視進行抑制(予防)

○ 弱視の早期発見(3歳~小学校にあがる前)
 → 網膜にうつった像を脳で処理する能力が育つのには、タイムリミットがあります
早期発見できる「子どもの弱視」
“弱視”と”ロービジョン”の違い

○ 全身疾患に伴う網膜疾患の早期発見(糖尿病、とくに40歳以降)
 → 医療機器の発達により、軽微な変化を捉えることもできるようになりました
OCTアンギオグラフィー(光干渉断層血管撮影)

○ ぶどう膜炎の管理(ベーチェット病、サルコイドーシス、関節リウマチ等の全身疾患に伴うことも多いです)
 → ぶどう膜炎診療に慣れた医師による診療/経過観察、九大眼科ぶどう膜外来との連携
ぶどう膜炎の診療をしています。

○ 眼精疲労の定量化・グラフ化(こども~全年齢)
 → デジタルデバイスをみる時間が、長くなりました
   眼精疲労により生産性が落ちることは、大きな損失になります
【20-20-20ルール】「ポモドーロテクニック」で遠ざける”デジタル眼精疲労”
ブルーライトとデジタル眼精疲労

○ アレルギー性結膜炎/花粉症(こども~全年齢)
 → 「目のかゆみ」による生産性低下
   早めの抗ヒスタミン薬点眼により、発症~重症化を抑えます
   症状/重症度に応じて、ステロイド・免疫抑制剤の点眼を考慮します
「花粉症の予防治療(初期療法)」のエビデンス

○ はやり目(流行性角結膜炎)のあとの角膜混濁
 → 黒目のにごりができてしまうことがあり、ときに数か月から数年残存します
   症状が強い時期から、炎症を抑える点眼を続けることが重要
はやり目(流行性角結膜炎)/治ったあとに気をつけること

* 英語による診療も可能です。

早良区高取(西新/藤崎)地域について:

・人口構成および地域性に特徴:“住みやすい街”/古くからの“紅葉八幡宮の門前町”
・交通の便が良い:通いやすい/連携先医療機関との協力を得られやすい

西新・藤崎・高取・百道・昭代・城西・室見 その他周辺より
徒歩・自転車および公共交通機関で来院されるかたが多くいらっしゃいます。
(2019.12月までの初診時アンケート結果:徒歩55%/自転車22%/地下鉄6%/バス4%/自家用車14%)

(1) 緑内障の早期発見
40歳以上の20人にひとりは緑内障:
あらゆる疾患で来院されたかたに、必ず視神経の状態をみています(瞳孔をひらかない診察)。

緑内障(疑い)が偶然みつかった方が、今年も多くいらっしゃいました。
極早期から緑内障をみつけることができるのは、優秀な医療器械を使うことができるからです。
“冷え性”と緑内障:フラマー症候群について

目の中の「視神経」のお話(スクリーニング)

OCT(光干渉断層計)を用いて、視神経乳頭や網膜の神経線維の厚みを測ります。この時点で、緑内障疑いか否かを判断します。

隅角(目の中の水の通り道)の評価・視野検査も含め、必要に応じた検査結果を総合して判断します。

現在では緑内障点眼薬に飛躍的な進歩があり、昔の緑内障のイメージとはだいぶ変わっているようにあります。

早期に適切な対処をおこない緑内障の進行を抑えて、一生を通じて視野障害の自覚症状が出ないようにすることが緑内障治療の基本と考えます。

点眼治療で十分な対応ができなくなったと判断されると、手術を考慮されることになります:“緑内障は手術で治らない”。

“緑内障”ということばに対して、どうか過剰な心配をされませんよう ひとりひとりの状態・今後の見通しにつき時間をかけてご説明します。

(2) こどもの目(小児眼科)
以下の3つを主軸とした診療です。
○ 先天性眼疾患
 ”少し気になる” ところから、早期発見が重要です。
  小児緑内障・先天白内障・斜視・網膜芽細胞腫/未熟児網膜症の経過観察
 * 必要に応じて、主に九大病院眼科と連携した診療をおこなっています。

○ 弱視
 3歳時検診で、正確に発見されていないことがあります。
 小学校にあがる前に、治療をはじめることが推奨されます。

○ 近視
 「めがねをかけたくない」:数年前と比べて、かなり医学の常識が変わりました。
 →近視進行抑制(予防) 
小中学生の近視増加/ドライアイ:今週発表された知見のご紹介

複数名の視能訓練士(ORT)と一緒に、こどもの検査をおこないます。
機械を使わない古典的な屈折検査(スキアスコープ/検影法)も、必要に応じておこないます。

アトロピン点眼・サイプレジン点眼を用いた精査の後、適切な眼鏡合わせもおこなっています。

時間をかけた検査のため、複数回にわけた検査をお願いすることもあります。
検査・治療のタイミングを逃さないことが大切です。
視能訓練士の仕事/小児眼科・ロービジョン
早期発見できる「子どもの弱視」

近視・屈折異常:
デジタルデバイスの多用により、近視の人口はさらに増えるものと思われます:
宿題や長時間の勉強等も併せ、近見調節障害となっているかたが多い印象です。

小中学生の近視増加/ドライアイ:今週発表された知見のご紹介
近視について:NHK放送予定のご紹介
「近視ブーム」

進行して強度近視の状態になると、成人したのちに緑内障・網膜変性などを発症するリスクが高くなってしまいます(病的近視)。

「人類は長きに渡り近視の進行に対してほぼ無抵抗の状態であったが、21 世紀に入りようやくそれに抗う手段を手に入れ始めた」(自治医大木下望先生1より)

最近は次々に近視進行抑制のエビデンス(証拠)が示され、(Pubmedより)世界中の論文を参照しました。
エビデンスに基づいた「近視進行予測グラフ」も、お見せできるようにしました。

近視進行抑制(予防)に対して、科学的証拠が充分あり且つ副作用等の危険のない方法をご紹介しています。
外遊びの時間を長くすることはとても大事2

調節機能解析装置(アコモレフ)の結果を元に、低用量アトロピン点眼を使用しています。
100倍に薄めることにより、ほぼ副作用の無いことも確認されています3
成長したころに近視が軽くなっているように、と思いながらの診療です。
こどもの近視・屈折異常

オルソケラトロジー4(治療プログラム)
時間をかけた十分な説明を、重要としています。
オルソケラトロジー – たける眼科 | 福岡市早良区 高取商店街

オルソケラトロジーが対象外となるかたには、先週から導入した多焦点コンタクトレンズ(EDOF)使用を推奨します5

(3) 網膜疾患への対応・ぶどう膜炎
糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、ぶどう膜炎、網膜静脈閉塞症 等の眼炎症性疾患 
および 近視性黄斑変性(病的近視) 等
OCT血管撮影(OCTアンギオグラフィー)で、網膜血管の状態を把握します。

2021.8.29 追記:以下を使用できるようになりました。
» 網膜画像診断の進歩:超広角眼底撮影

画像診断の進歩により”メディカルレチナ”と名付けられた領域が確立され、10数年前と比べて手術を必要とする疾患が減りました。

九大・留学から最も情熱を持って研究・診療を行っている分野です。
必要に応じて、主に九州大学眼科と連携した診療をおこないます。
眼底にレーザー治療/目の中に注射をする理由
眼炎症・ぶどう膜炎

(4) ドライアイ・角膜疾患
ドライアイは、炎症を機転に眼表面涙液層の悪循環が起こっているとされています。
症状のある方にはフルオレセイン染色を行い、それぞれ目の表面の状態の説明を行っています。
ドライアイについて:日本眼科学会雑誌より

角膜ヘルペス、角膜炎、角膜潰瘍等 角膜疾患に対しては感染症学・免疫学の知識を多く必要とします。

細菌染色(グラム染色)も補助診断として、持っている知識を抗生剤/ステロイドの使い方につなげています。

円錐角膜の診療・ハードコンタクトレンズ処方にも対応しています。

画像を用いて、遠方の角膜専門医と相談することもあります。

(5) ピント調節の状態を評価後の、適切な眼鏡・コンタクトレンズ処方
調節機能解析装置により、ピントを合わせる筋肉(毛様体筋)の状態を示します。
あわない眼鏡・コンタクトレンズを使用していることが、疲れ目や眼精疲労に繋がっていることが多いようです。
“目がいい人は老眼になりやすい”
ブルーライトとデジタル眼精疲労
「スマホ内斜視」(スマートフォンの使いすぎによる “寄り目”)

視能訓練士(ORT)の協力を得て、それぞれの生活状況に合わせて適切な眼鏡・コンタクト処方を行っています。
コンタクトレンズ診療では、角膜内皮細胞の評価を必ずおこなっています。
40歳以降では、視神経の異常が偶然みつかることもたびたびあります(上記(1)に記載)。
コンタクトで楽譜がよくみえる
眼科でコンタクトをつくる意味

(6) 白内障について
加齢にともない全ての方に水晶体の濁りが生じます(白内障)。
手術を必要としないことも多いですが、かなり進行してしまう前に治療を行うことも大切です。

精査の上、治療の適応を判断しご説明します。
「日常生活に不自由があるか否か」、ご本人のご自覚が一番重要です。

必要に応じて、手術を専門とする医師へ直接の紹介を行っています。
令和の時代
“見え方の質” を説明できる機械の導入

(7) ロービジョン外来(予約制)
「両眼に矯正眼鏡を装用して視力を測り、視力0.05以上0.3未満」をロービジョンと定義されています(世界保険機構, WHO)。
それ以外でも、見えにくい/まぶしい などの症状に対し、
視覚補装具:拡大鏡、ルーペ(エッシェンバッハ社製)、遮光眼鏡、タイポスコープ、手持ち式拡大読書器、単眼鏡 等のご紹介をします。

現在までに 網膜色素変性症/小眼球症/レーベル遺伝性視神経症/(進行した)緑内障/黄斑変性症のかたに、視覚補装具のご紹介をおこないました(現在までも長く経過を診ている方です)。

“弱視”と”ロービジョン”の違い


いつでも受診しやすい心地良い空間をつくること、
優秀なスタッフ/助けてくれるかたがたには感謝するばかりです。
いつもありがとうございます。
お待たせしない工夫/院内システム構成

上記に挙げた疾患以外にも、
赤ちゃんから大人・ご年配のかたまで、地域の全てのかたの目の健康に携わっていきたいと思います。
ささいなことでも、いつでもご相談ください。

引き続きわたし自身も常に知識のアップデートをおこないます。
どうぞよろしくお願いいたします。

* ファインガーデン高取敷地内裏の駐車場もご利用ください。
* 一方通行の細い道で少しわかりづらいため、お電話でもお尋ねください。
周囲のコインパーキングの地図もつくっています。

(参考)

1. 木下望. 2019. 特集:近視 オルソケラトロジーと低濃度アトロピン点眼液の併用による近視進行予防, 視覚の科学, 第40巻第4号
2. Wu, Pei-Chang, Chen, C.-T., Lin, K.-K., Sun, C.-C., Kuo, C.-N., Huang, H.-M., Poon, Y.-C., Yang, M.-L., Chen, C.-Y., Huang, J.-C., Wu, Pei-Chen, Yang, I.-H., Yu, H.-J., Fang, P.-C., Tsai, C.-L., Chiou, S.-T., Yang, Y.-H., 2018. Myopia Prevention and Outdoor Light Intensity in a School-Based Cluster Randomized Trial. Ophthalmology 125, 1239–1250. https://doi.org/10.1016/j.ophtha.2017.12.011
3. Wu, P.-C., Chuang, M.-N., Choi, J., Chen, H., Wu, G., Ohno-Matsui, K., Jonas, J.B., Cheung, C.M.G., 2019. Update in myopia and treatment strategy of atropine use in myopia control. Eye 33, 3–13. https://doi.org/10.1038/s41433-018-0139-7
4. Lipson, M.J., Brooks, M.M., Koffler, B.H., 2018. The Role of Orthokeratology in Myopia Control: A Review. Eye & Contact Lens: Science & Clinical Practice 44, 224–230. https://doi.org/10.1097/ICL.0000000000000520
5. Sankaridurg, P., Bakaraju, R.C., Naduvilath, T., Chen, X., Weng, R., Tilia, D., Xu, P., Li, W., Conrad, F., Smith, E.L., Ehrmann, K., 2019. Myopia control with novel central and peripheral plus contact lenses and extended depth of focus contact lenses: 2 year results from a randomised clinical trial. Ophthalmic Physiol Opt 39, 294–307. https://doi.org/10.1111/opo.12621

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